経営協議会

地方独立行政法人法が施行された後、研究予算の配分に当たって、経営協議会が研究の重要性について教員のプレゼンテーションを求める大学も出てくると予想された。法人化されても運営費の財源は国民の税金なのだから当然だ。教員は説明能力が求められるようになる。

大学人からは、法人化で基礎科学の研究が軽視される、との批判があった。しかし、日本の企業は基礎研究を大学に依存する傾向をますます強めていた。また、決定権を持つのは、あくまでも大学人である学長だ。経営協議会で企業経営者ら学外者の声が強まっても、基礎研究が軽視されるとは考えにくい。

大学が特許を保有

大学の研究成果を実社会に生かす応用科学の面では、法人化は間違いなく追い風になるった。

国立大学はこれまで、特許などを管理する技術移転機関(TLO)を設立してきた。しかし、大学が直接出資できないため、教員らが資金を持ち寄り、小資本の株式会社などのかたちで活動せざるをえなかった。

法人化後は、私立大学のように各大学が特許などの知的財産を保有し、大学内に知財本部をつくって活用できるようになる。

教員は非公務員。企業役員になれる

また、教職員は非公務員になるので、ベンチャー企業の役員として経営にも携われる。企業との提携や出資の受け入れも容易になる。2003年の時点で企業とベンチャーキャピタルを立ち上げた国立大学もあった。大学自身が研究成果の事業化にかかわるようになる。

日本の企業はこれまで、日本の大学に対する委託研究などの研究投資の二倍以上の資金を海外の大学に投じてきた。欧米の大学が法人格を持ち、特許の共同保有などの面で使い勝手がよかったことも一因だ。しかし、法人化制度の導入により、日本の大学への研究投資が増えることが期待された。大学から企業への働きかけも積極的になった。

東京大学は資産の時価6000億円超

一方で、大学間格差は広がった。国有財産だった大学の土地や施設は大学法人の資産になった。2003年時点において、時価6000億円を超す東京大学と、地方の単科大学とでは200倍の差があった。企業との連携も一部の大学に集中する恐れがあった。統合や提携、移管などの動きが続いた。

授業料は上がるとの予想

法人化後の入試がどう変わるかも注目された。2003年時点の国立大学の授業料は一律年額52万8000円だった。アンケートによると、四分の一の学長が「授業料は上がる」と予測した。付属高校を持つ国立大学は、付属高校からの推薦入学を私立大学並みに拡大しようと検討していた。

教育施設や教員数に余裕があることを武器に、入学定員を増やす大学も出た。受験生の奪い合いは激化した。