アジアで上位狙う
(2007年10月7日)
一橋大
世界レベルの研究競争
「世界レベルの研究競争に挑み、アジアを中心とした人材獲得競争に加わるには、上位に入る方策を考えなければならない」
一橋大の国際戦略本部
学内シンポジウム
2007年7月半ば、一橋大の国際戦略本部が「世界大学ランキング」をテーマに開いた学内シンポジウム。研究担当役員補佐の加藤哲郎教授が、講義室を埋めた約100人の教職員に訴えた。
タイムズ・ハイアー・エデュケーション・サプリメント(THES)
英タイムズ紙系列
英タイムズ紙系列の週刊紙タイムズ・ハイアー・エデュケーション・サプリメント(THES)が2006年10月に発表したランキングで一橋大は314位、日本では21位だった。トップクラスを誇る国内の評価とはギャップがある。
順位付けの基準
世界の学者の評価
どんな基準で順位付けが行われるのか。2006年の場合、▽世界の学者3703人の評価▽国際的な企業の採用担当者736人による評価▽教員に外国人が占める比率▽学生に外国人が占める比率▽学生と教員の比率▽教員1人あたりの論文引用数--の計6指標の合計点で算定された。
大学の国際化
海外での知名度不足
シンポでは、「外国人教員や留学生が少ない」「海外での知名度不足が響いている」といった分析が行われた。加藤教授は、留学生らの積極的な獲得、海外有力誌への論文提稿などの方策を挙げた。西村可明(よしあき)副学長は「順位を上げる努力は大学の国際化や教育研究の向上につながる可能性がある」と締めくくった。
THESの「番付」
中国・上海交通大
THESが世界の約500大学を対象に順位付けを始めたのは2004年。中国・上海交通大は2003年、米誌ニューズウイークも2006年から始めたが、高等教育分野で知られるTHESの「番付」は注目度が高い。
大学を比較する情報
大学を選ぶ際の参考
順位付けが活発になった背景について、THESのマーチン・インス記者は「約300万人の学生が自国の外で学び、研究者の国際的な流動性も広がっている。大学を比較する情報への需要は高い」と説明する。学生らが大学を選ぶ際の参考になるというわけだ。
東北大
井上明久学長
井上プラン2007
東北大の井上明久学長も「世界から人材を集めるには、大学の実力が最高水準にあると具体的に示すことが必要だ」と語る。2007年4月、教育研究などの行動計画をまとめた「井上プラン2007」のなかで、「10年後に世界トップ30位以内」という目標を掲げた。
物理や化学分野の論文引用数
医学や生命科学分野の強化
THESでは世界168位だが、他のランキングでは68位と76位。物理や化学分野の論文引用数は世界レベルだけに、医学や生命科学分野の強化を図れば、「可能性は十分ある」と見る。
ランキングの問題点
東京大国際連携本部
一方、ランキングの問題点を指摘する声もある。東京大国際連携本部の武内和彦教授は「米国や英国など英語圏の大学に偏った評価だ」と言う。
大学の「研究力」
東大は19位
各種ランキングが重視する大学の「研究力」。評価対象は英語の論文だ。日本でも理系分野は英語の論文発表が主流になってきたが、日本語が中心の人文・社会科学分野は「国際評価」を得られず、総合点は伸びない。THESのトップ20では13位まで米英の大学が独占、アジアは東大(19位)を含めて3校しかない。
東大がTHESに回答
教員数などのデータ
東大は2007年初めて、教員数などのデータをTHESに提供するロンドンの会社からアンケート用紙を取り寄せ、回答した。従来、データは公的な統計資料などから取られており、不正確な部分もあると言われているからだ。
社会的影響力や注目度
本音は「コメントに値しない」
ランキングについて武内教授は「社会的影響力や注目度を無視することもできない。本当は『コメントに値しない』と言いたいが……」と苦笑いする。
日本の有力大学
ランキングに向き合う
好むと好まざるとにかかわらず、日本の有力大学はランキングに向き合うことを迫られている。THESの2007年のランキングは11月上旬に発表される。
阪大の新総長
(1991年7月17日)
金森学長
期待の登板
東大、京大にならい、学長を「総長」と自称する阪大だが、「頂点の東大」「ノーベル賞の京大」ほど、世間の耳目は集まらない。港町のハイカラさで売る隣の神戸大に、受験生の人気も移りつつある。「阪大を彼の体格(178センチ、81キロ)のようなスケールに」(同僚教授)と期待されての登板だ。
東大の有馬総長
湯川さんの受賞業績
母校を熱い口調で弁じる。「東大の有馬総長が物理の論文数を調べて東大、京大、阪大の順と言うんだけど、研究者1人当たりにすればウチが一番」「いずれノーベル賞だって。湯川さんの受賞業績は阪大時代の仕事ですよ」。そうは言ったものの「やっぱり地味かなあ。元気なところを見せないと…」。
大阪大学人間科学部
新しい学問に積極的に取り組む
そのために、新しい学問に積極的に取り組む学風を軸にしたいという。確かに、人間科学部など全国に先駆けてつくった学部、学科の数も多い。ただ、それは旧帝大系の中では若い大学だからこそ、できたことでもある。その阪大も1991年還暦を迎えた。
大学院への飛び級を実現
国立大学で初めて
「老化は大敵」と理学部長時代、国立大学で初めて、3年生から大学院への飛び級を実現するなど、活性化の手を次々に打ってきた。
近鉄一家
金森茂一郎氏
「バランス感覚に優れて利害調整がうまく、重役タイプ」との同僚評。祖父は社長、父は会長を勤めた近鉄一家の血か。現社長の兄茂一郎氏と隣り合わせに住み、近鉄での通勤でときどき一緒になる。
好奇心の塊
家庭菜園で畑仕事
家の菜園でキイチゴやブルーベリーを育て、ジャムにする。味はかなりのもの。本人は「畑仕事は頭がすっとするんで」というが、妻の幸子さん(57)によると「好奇心の塊」がそうさせているらしい。
かなもり・じゅんじろう
大阪市生まれ。1953年に阪大理学部物理学科を卒業。通算4期、7年目の理学部長在任中。妻、大学院生の次男と奈良市に住む。専門は物性理論。61歳。